音楽祭&セミナー&コンクール
以前の投稿から早くも3ヶ月以上が経とうとしている。この3ヶ月はセミナー4つに参加し、イタリアのコンクール1つを経験した。新曲初演は3曲。1月に1回初演していた計算になるのか。そう思うと結構頑張ったな。音楽以外だとローマとトリノを旅行をできたことが思い出に残る。
4月の後半にはバルセロナで開催される国際音楽祭 'Mixtur 2019' に参加した。行くまで僕はこの音楽祭について全く知らなかったが規模的にも内容的にも充実した素晴らしいものだった。さまざまな作曲家や演奏家の特色あるレクチャーをたくさん聞くことができたし、T.ミュライユ、S.プリンスの個人レッスンを受けることもできた。ミュライユは非常にクラシカルな思想を持った人で残念ながら僕の曲をあまり評価していなかった。音楽が分断されすぎだし、作品にあるはずの理由がそこにはないと言っていた。ただ管弦楽法に関しては褒めてくれたかな。一方プリンスは年齢が若いこともあって、新しい感性に対してとてもオープンでそれぞれの学生の作品をワクワクしながら聴いていた。 3月に初演した劇場性を伴う作品を紹介したこともあってプリンスらしい実際的な身体性、動きへのアドバイスをもらう。それと僕が日頃テーマにしている「多時間」に関するアイディア、指摘には目から鱗というか驚かされた。時間はもっと多様な意味を持ちそして人の心の中に存在するものなんだ。
音楽祭の後は少しばかりの観光。僕は以前より(ファリャを引用した作品はコンクールで良い結果を得たり、ヨーロッパではじめての友達はスペイン人だったこともあって)スペインになぜか縁を感じていた。しかし、バルセロナはそんな期待を裏切ることのない素晴らしい土地だった。暖かい雰囲気、どこまでも青い空、優しい人々。観光は主にガウディの建築巡りをした。サグラダ・ファミリアはやはり傑作で特に内部空間は衝撃的。建築でこれほど感動したことはない。そういえば改元はバルセロナの教会で迎えた。
5月はミラノの現代音楽アンサンブル、mdi ensemble主催の 'Newmusic Week 2019' に参加するため、2年ぶりにローマへ。僕はB.フラーのクラスに入った。レッスンはなかなかに辛口で、要するによくわからないし映画音楽みたいという感じ。厳しいのう。作品の試演をしてくれるReading session内では、念願だった地元の奏者とコンタクトを取ることができ、ああやっぱりヨーロッパではこういう精度で作品が演奏されるのだと感動。この音楽祭は小さいながらも、51人の作曲家、演奏家を育成する温かい環境だった。レベルの高い作曲家が沢山いたのはもちろん、こんなにも現代音楽をやりたい奏者がいることに驚かされた。それにしてもmdi ensembleの教育熱は半端ではない。朝から晩まで学生たちの作品を演奏し、そして毎日良質な演奏会を提供してくれる。それが出来る彼らのスペックが高いのは当然として何よりその志、人間力の高さを感じる。
ミラノ音楽院賞に向けてはマエストロと数ヶ月頑張ったので演奏されることが決まって本当にホッとした。ミラノにあるダ・ヴィンチの『アトランティコ手稿』の一枚からインスピレーションを得て作曲した。演奏はローマのセミナーでお世話になったmdi ensemble。彼らがいかに人間性があるのか知っていたので、演奏に関しては全然心配していなかった。バルセロナでの失敗を活かしたのもあって奏者とうまく音楽を作っていけたと思う。本番は理想の演奏になった。改めてmdi ensembleの素晴らしい演奏に感謝したい。結果は2位。どの曲もレベルが高かったので万々歳。母校ミラノ音楽院に名前を刻んだぜ笑!コンクール時の動画はこちらから↓短いインタビュー付きです笑
本番は多くの友人がわざわざ応援に来てくれたし、マエストロもクラスメイトもとても喜んでくれたしで本当に嬉しく幸せな時間を過ごした。副賞として来年ミラノ音楽院に設立された現代音楽アンサンブルm2cからの委嘱がくる。頑張ろう。
コンクールのご褒美もかねて7月はまたもや建築科の友人とトリノへ旅行。友人の指導のもと様々な建築を見てまわる。名所であるトリノ王宮にはイタリア留学実現への第一歩となったオーケストラ作品(この作品が日本音楽コンクールに入選したおかげで今僕は留学できている)のモチーフとなったダ・ヴィンチの『鳥の飛翔に関する手稿』が保管されている。3年ぶりにイタリアで手稿と再会し、直接あの時のお礼を言う事ができた。こんな日が来るとは。
建築科の人らしく1961年のトリノ万博の跡地=現代建築巡りもしたのだがこれが面白くて、半分廃墟化しつつも当時の万博のワクワク感や未来への夢を感じられる良い建築がたくさんあった。レージョ劇場でガーシュウィンのオペラを見たり、国立映画博物館に行ったり、フィアットのお膝元とあって自動車博物館に行ったり、遠出して山の上のサンミケーレ修道院行ったりと充実した旅になった。
7月は以前より参加を夢見ていたキジアーナ音楽院での夏期作曲マスタークラスに参加するためにシエナに。イタリアの田舎町に初めて来たのだが、あまりの街の美しさに驚かされる。イタリアは見るべき場所が途方もなくある。
作曲コースではシャリーノの指導の下、2週間で新曲を書き、リハーサルをし、演奏会で初演するという実にユニークな(ハードすぎる)時間を過ごすことができる。学部3年の時、シャリーノの音楽に開眼してから彼の音楽は特に音色の側面で僕の音楽に刺激を与え続けてくれている。実際に会えてとても嬉しかった。シャリーノは思った通り不思議というか掴み所のない、しかし芯のある人だった。マスタークラスで僕は相変わらずのダメ男っぷりを発揮して「七転び二起き」という感じで終わってしまったが、これまで受けたどのセミナーより良い経験ができたと思う。とにかく来ていた学生達の雰囲気がとてもよく、毎日マエストロと熱心に語り合い学び合う時間は気持ちが良かった。
演奏家は世界的に有名な奏者達、プロメテオ四重奏団、フルートのマッテオ、クラリネットのパオロが引き受けてくれた。彼らは本当に素晴らしい音楽家で、前日に楽譜を渡したというのに僕の難曲を初回のリハーサルからほぼ完璧に仕上げてきた。奏者との対話の中で自作がどんどんよくなっていく幸せ。演奏会ではトリの曲にしていただいて(まあ編成上の都合なだけなんだけれど笑)光栄だった。セミナー後、授業料全額免除の奨学金をなぜかいただけて、この2週間を無料で・・・・と気が遠くなる。
2週間で書いたのであまりいい作品とは言えないが、ずっと試したかったアイディアを実践しうまくいったことは今後の創作の希望となる。音源はこちらから→https://soundcloud.com/tetsu-ottetto/lost-for-6-musicians/s-PYHaY
そろそろイタリアでの1年が終わろうとしている。何もかもがあっという間に過ぎていく。何が辛いってせっかくできた友人達とのお別れだ。とても寂しい。ヨーロッパで初めての友人、クラスメイトのギュレルモ。人をつなぐ頑張り屋さんのヴァイオリニスト。ご飯が大好きな頭の切れるピアニスト。様々な建築を芸術を語り合った友人。僕は転校が多かったので見送られる側はたくさん経験したけれど、見送る側がこんなに寂しいとは知らなかった。みんな元気で。
4月の後半にはバルセロナで開催される国際音楽祭 'Mixtur 2019' に参加した。行くまで僕はこの音楽祭について全く知らなかったが規模的にも内容的にも充実した素晴らしいものだった。さまざまな作曲家や演奏家の特色あるレクチャーをたくさん聞くことができたし、T.ミュライユ、S.プリンスの個人レッスンを受けることもできた。ミュライユは非常にクラシカルな思想を持った人で残念ながら僕の曲をあまり評価していなかった。音楽が分断されすぎだし、作品にあるはずの理由がそこにはないと言っていた。ただ管弦楽法に関しては褒めてくれたかな。一方プリンスは年齢が若いこともあって、新しい感性に対してとてもオープンでそれぞれの学生の作品をワクワクしながら聴いていた。 3月に初演した劇場性を伴う作品を紹介したこともあってプリンスらしい実際的な身体性、動きへのアドバイスをもらう。それと僕が日頃テーマにしている「多時間」に関するアイディア、指摘には目から鱗というか驚かされた。時間はもっと多様な意味を持ちそして人の心の中に存在するものなんだ。
音楽祭会場。繊維工場跡を使っているそう。
この音楽祭は事前の選考によって数名の学生が3分の小品を初演できるという面白いプロジェクトがあり、嬉しいことに僕も初演できることになった。編成はエレキギター、ヴァイオリン、チェロのトリオ。僕にとっては大冒険の編成が振り当てられてしまった笑 拙い英語でリハーサルをこなし、いよいよヨーロッパで初めての新作初演。しかしこれがまあ最悪だった。こんなに酷い初演は過去なかっただろう。今でも思い出すと頭がクラクラしてしまう。曲の不出来もそうだけれど演奏もなかなかに崩壊していた。とてもショックで、ああ自分の音楽はヨーロッパでは通用しないのだとしばらく立ち直れなかった。しかし終演後プリンスは落ち込む僕に一言くれて、それが僕を救った。やはりスターはすごい。悔しいので来年もう一度チャレンジしたい。
サグラダ・ファミリアと美しいカタルーニャ音楽堂。令和最初の演奏会はフラメンコだった。
5月はミラノの現代音楽アンサンブル、mdi ensemble主催の 'Newmusic Week 2019' に参加するため、2年ぶりにローマへ。僕はB.フラーのクラスに入った。レッスンはなかなかに辛口で、要するによくわからないし映画音楽みたいという感じ。厳しいのう。作品の試演をしてくれるReading session内では、念願だった地元の奏者とコンタクトを取ることができ、ああやっぱりヨーロッパではこういう精度で作品が演奏されるのだと感動。この音楽祭は小さいながらも、51人の作曲家、演奏家を育成する温かい環境だった。レベルの高い作曲家が沢山いたのはもちろん、こんなにも現代音楽をやりたい奏者がいることに驚かされた。それにしてもmdi ensembleの教育熱は半端ではない。朝から晩まで学生たちの作品を演奏し、そして毎日良質な演奏会を提供してくれる。それが出来る彼らのスペックが高いのは当然として何よりその志、人間力の高さを感じる。
大好きなmdi ensembleの奏者達と。お腹が出ている。
音楽祭終了後は建築科の友人と合流してローマ旅行。ローマにある色々な建築を見てまわった。ヴァチカンにパンテオンにコロッセオにトレビの泉、ブラマンテの傑作テンピエット・・・・とローマを見るにはいくら時間があっても足りないが、特にローマから1時間ほど電車で行ったティボリはこれまでで最高の旅の時間になった。
ヴァチカンとミラノ音楽院と双璧のサンタ・チェチーリア音楽院
旅を計画してくれた友人に心から感謝している。あの光景、時間は一生忘れない。ティボリはF.リストが巡礼の年3巻を作曲したエステ荘がある場所だ。リストの作品を聴きながら美しい噴水をずっと眺めていた。
ティボリのエステ荘の噴水とヴィッラ・アドリアーナ
6月はM.ストロッパとのマスタークラスにミラノ音楽院賞に慌ただしい日々だった。憧れのM.ストロッパは作品そのままの知的な人で一目楽譜を見ただけで曲を正確に理解し正確にアナリーゼをし続ける超人。僕のオーケストラ作品に関しても30分ほど、ほぼ息継ぎなしで(笑)アナリーゼをし、良い点、課題を的確に指摘してくれた。かといって頭でっかちにはならず、他文化を尊重し僕の個性を尊重し、多様な表現を愛する人間味溢れる人だった。ヨーロッパでは一番褒めてくれた作曲家かもしれない。
リハーサル時
ミラノ音楽院賞に向けてはマエストロと数ヶ月頑張ったので演奏されることが決まって本当にホッとした。ミラノにあるダ・ヴィンチの『アトランティコ手稿』の一枚からインスピレーションを得て作曲した。演奏はローマのセミナーでお世話になったmdi ensemble。彼らがいかに人間性があるのか知っていたので、演奏に関しては全然心配していなかった。バルセロナでの失敗を活かしたのもあって奏者とうまく音楽を作っていけたと思う。本番は理想の演奏になった。改めてmdi ensembleの素晴らしい演奏に感謝したい。結果は2位。どの曲もレベルが高かったので万々歳。母校ミラノ音楽院に名前を刻んだぜ笑!コンクール時の動画はこちらから↓短いインタビュー付きです笑
結果表
コンクールのご褒美もかねて7月はまたもや建築科の友人とトリノへ旅行。友人の指導のもと様々な建築を見てまわる。名所であるトリノ王宮にはイタリア留学実現への第一歩となったオーケストラ作品(この作品が日本音楽コンクールに入選したおかげで今僕は留学できている)のモチーフとなったダ・ヴィンチの『鳥の飛翔に関する手稿』が保管されている。3年ぶりにイタリアで手稿と再会し、直接あの時のお礼を言う事ができた。こんな日が来るとは。
ありがとう。ダ・ヴィンチさん。
ここから当時モノレールが出て各パビリオンを繋いでいたそう。ロマンがすごい。
キジアーナ音楽院
シエナのパラッツォとドゥオーモ
マエストロ、シャリーノと
そろそろイタリアでの1年が終わろうとしている。何もかもがあっという間に過ぎていく。何が辛いってせっかくできた友人達とのお別れだ。とても寂しい。ヨーロッパで初めての友人、クラスメイトのギュレルモ。人をつなぐ頑張り屋さんのヴァイオリニスト。ご飯が大好きな頭の切れるピアニスト。様々な建築を芸術を語り合った友人。僕は転校が多かったので見送られる側はたくさん経験したけれど、見送る側がこんなに寂しいとは知らなかった。みんな元気で。
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