イタリアのコンサート・オーケストラ


イタリアと言えばオペラ。誰しもがそう言う。ではオーケストラは?あまり知名度はないだろう。というか僕は知らなかった(笑) 他のヨーロッパ諸国と同様にイタリアもあちこちに大小様々なオーケストラが点在しているが、主要なオーケストラは以下の5つに絞れると思う(まったくドイツという国は化け物ですよ本当に)。日本での知名度順に並べるとこんな感じか。

ミラノ・スカラ座フィルハーモニー管弦楽団
アルトゥーロ・トスカニーニ・フィルハーモニー管弦楽団
サンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団
RAI国立交響楽団
ミラノ・ジュゼッペ・ヴェルディ交響楽団

各オーケストラそれぞれにサウンドの特色があり、また得意なレパートリーも異なるが一通り聴くことができたので個人的にランキングしてみたい。

サンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団 S+
トスカニーニ・フィルハーモニー管弦楽団 S
ミラノ・スカラ座フィルハーモニー管弦楽団 A+
ミラノ・ジュゼッペ・ヴェルディ交響楽団 A
RAI国立交響楽団 B+

ローマを拠点とするサンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団はイタリア最古のコンサート専門のオーケストラ。一時期バーンスタインが名誉総裁でグラムフォンに素晴らしいドビュッシーの録音を残している。異常なまでに各声部、各楽器が明瞭に聴き分けられるのが特徴。そのため良くも悪くもあえて響き過ぎないように調整している感じ。首都ローマのオーケストラだけあって企画、運営の充実具合が素晴らしい。指揮者もソリストも一流ばかり。物凄くかっこいいホール「アウディトリウム・パルコ・デッラ・ムージカ」を本拠地としている。間違いなくイタリアで最高のコンサート・オーケストラ。

「アウディトリウム・パルコ・デッラ・ムージカ」。設計はサントリーホールと同じ人。

パルマを拠点とするトスカニーニ・フィルハーモニー管弦楽団。音を聴いた瞬間から昔よく聴いた今はなきNBC交響楽団の(雑味が徹底的に廃された)サウンドを思い出し胸が熱くなった。このオーケストラは団員一人一人がソリストとして契約していることもあって個人個人がうますぎる。そのためありえないくらい、いやもはや異様なくらい弦セクションは音程が揃っているし、金管楽器はこれでもかと個人個人が主張し表現する。このオーケストラは室内楽の精神でオーケストラの高みを目指す、そういう場なのだと思う。この独特なサウンドは世界中でこのオーケストラでしか聴くことは出来ない。少数精鋭オーケストラ。

ミラノ・ジュゼッペ・ヴェルディ交響楽団は創立30年弱だがイタリアを代表するオーケストラだと感じた。イタリアでは珍しく癖のない世界スタンダードなオーケストラと言える。ミラノらしい明るい色彩を持ち、また、団員が若いためどの曲目も伝統に縛られず新鮮な演奏を繰り広げている。キュンとくる弦のサウンドはこのオーケストラ最大の美点。特に近代物と相性が良く、このオーケストラによる『ローマの松』の演奏は圧倒的だった。あれほどの名演はそう何度も聴けない。ミラノに一番根付いたオーケストラで、演奏会へ行くと地元民がいかに愛しているかがよく分かる。個人的にお気に入り。

ミラノ・ジュゼッペ・ヴェルディ交響楽団の本拠地。ミラノには音響の良いホールがたくさんある。

イタリアの至宝、スカラ座フィルハーモニー管弦楽団はオペラ公演はもちろん、一年を通して独立したオーケストラとしての活動も活発に行なっている。断トツでサウンドに歴史の重み、個性があり(悲しいかなそれは一方で世界のスタンダード?にはなり得ないものではあるが)このオーケストラでしか聴けない音楽が確かにある。間違いなく世界的な名門オーケストラの一つではあるのだが、コンサート専門となるとスカラ座独特のサウンドが全面に出過ぎるきらいがあり、好みは別れるだろう。ただしそうした奏者達の意地、志が時にどこよりも凄まじい演奏を引き出すことがあるから侮れない。ということで、なんやかんやローマと双璧のオーケストラ。

スカラ座内部。やはり絵になります。

トリノを拠点とするRAI国立交響楽団は日本でいうN響の立ち位置。この楽団の発売するCDはなぜか現代音楽ばかりで、応援したくなってしまう。弦楽器群が独特でミラノの地下鉄っぽいというかストーンって感じの音色(なんじゃそりゃ)。若干演奏にムラがあるけれど、本気を出せば前述のように複雑な現代音楽でもしっかりしたアンサンブルも聴かせてくれるわけだからポテンシャルはとても高い。毎年プログラムに4公演ほど現代音楽に特化した演奏会を入れてくれるし、ミラノで開かれる現代音楽祭Milano Musicaに毎年参加する等、現代音楽にかなり積極的。嬉しいなあ。

ミラノの地下鉄はかなりかっこいい。

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