家主と隣人と

僕は家探しについてはかなり幸運で、あっという間に家が決まり、多くの留学生が苦心する住居証明についてもスムーズに得ることができた。何より家主が日本人女性だったことがよかった。日常生活に関しては現在でも全く困っておらずありがたい限り。

充分すぎるスペースがあって快適

家主さんと出会って4ヶ月。イタリア人の旦那さんがちょうど僕が住む直前に亡くなられてしまったこともあってか、たまに部屋に呼ばれては一緒に食事をしたり、一緒に演奏会のチラシを作ったり、娘さんの印刷機の設置を手伝ったり(笑)、届かない荷物を求めて郵便局を共にたらい回しにされたり(笑)、配線工事を手伝わされたり(笑)してきた。その中で彼女の文字通り波乱万丈の人生を聞く機会があった。歌をただ歌いたくて身一つでイタリアに来たこと、誰も助けてくれなかったこと、結婚、出産、アメリカでの生活。僕にはとてもできない時間を過ごしてきたレジェンドだと思う。来週は亡くなったご主人の追悼演奏会に行く。

隣人は3人変わった。最初はコック見習いの男性。粗暴が悪いと聞かされていたが、特に困ることはなかった。さすがコックで隣からはいい匂いがいつも立ち込める。地方のレストランでの雇用が決まったことで別のアパートへ。日本人がこちらでイタリア料理のシェフをやっていくというのはやはりすごいことで、夢が叶うよう祈りたい。

今住んでいるところではないが、ミラノの住宅地の形態はだいたいこんな感じ

次は短期で歌科の女性の方。僕と同時期に入試を受けていて、お互い受かるといいですねといった軽い話をする程度だった。僕がビザ申請のために日本へ帰国中に別のアパートへ移ったようだ。元気にしているだろうか。

で現在は建築を学んでいる方。「久保さん今日変人度上がってますよ」と真顔で正しい評価を下す気持ちの良い女性(笑) 本人に言ったら怒られそうだけれど、かなり僕と考え方や大事にしている精神が似ている。こういう人は初めて会った。
また、彼女は音楽が好き(というか建築の人はアートが好きか)ということで、せっかくイタリアにいるんだからと他の建築科の学生も連れて演奏会へ足を運ぶ。逆に彼らからは建築の話を聞かせてもらっている。


これは美術展覧会ミラノトリエンナーレ関連で作られた建築だそう

留学中の人との出会いというのは決められた時間だけ、つまり音楽家でない限り日本に帰ったらもう会うことはないだろう。色々と深いところまで知った家主さんとの関係も帰国したら切れてしまう。時間は有限で貴重で、にも関わらず人生はどう進むか誰にも分からない。まさに一期一会を体感する時間が留学の醍醐味かもしれない。

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