芸は身を助ける
最近ミラノ在住の日本人に会うことが多い。先週はパリから遊びに来た先輩とレストランでご飯、昨日は家に日本人の友達を呼んでうどんパーティーだった。しかし留学中の同国人の知り合いというのは本当に心強い。僕が東京芸大にいた頃の後輩が今ミラノ音楽院で先輩になっているのだが、彼からは何から何まで多くのことを教えてもらった。イタリアに来てからの手続きの仕方や学校の制度、イタリアの緩さなど事前に知れたおかげでそこそこ順調?に留学を始めることができている。ただ一方で昨年彼は誰も頼る相手がいない中、一人でここまで来たのだから頭が下がるし、自分は誰かの作った道を歩いているだけでなんとも情けない。誰かの道を歩く、これはもう半ば癖みたいになっていて自分の最大の弱点だ。
レストランで食べた小豆味のパスタ。不思議な味。
ミラノにいる日本人は、もちろん人によるとは思うけれど皆とても大人っぽい。ドイツやパリの友達とはまた違った筋の通った人が多い印象。それは確かに、僕の愛するイタリアの音楽から感じる強さと重なる部分があるのかもしれない。イタリアの精神は実はとても厳しいのだろうか。
ミラノ音楽院もいよいよ新学期がはじまり、賑わっている。
もうすぐこちらにきて1ヶ月。なんだか半年くらい過ぎたようだ。相変わらずイタリア語はよく分からないし、とにかくできないことが多すぎる。失敗して気分が沈むことも日常茶飯事。今まで日本で積み上げてきた成果、経歴はもちろんイタリアには持ってこれないので、文字通り一から出直し・・・・というか成果というものはそれだけあってないようなもの。結局どこにいようと信用できるのは自分の音楽だけ。音楽家の価値はどれだけ自分の足で音楽を旅できるかにかかっている。成果という幻想で自分の可能性を狭めてはいけない。
音楽というのはやはり偉大だ。辛い時も作曲をすればワクワクするし、音楽を通じて先生やクラスメイトと交流できる。友人もできる。努力して磨いた芸が僕を助けてくれる。ここ1ヶ月の1番の気づきは、音楽さえあれば僕はこの世の中を生きていけそうだという確信だった。
苦労してやっと手に入れた定期券。月20€(2600円くらい)で市内乗り放題。
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